ふるさとの自然を、まもり育てる。

神野公園トンボ池について

トンボ王国さが

平成元年(1989年)、バブル経済の勢いで始められた政策「ふるさと創生事業」は、国内の各市町村に対して地域振興のために1億円を交付したことから「ふるさと創生1億円事業」とも呼ばれました。その使い道は各市町村に委ねられ、政府は一切関与しませんでした。

河川、クリーク、水路が網の目のように張り巡らされた佐賀市は、水質悪化による悪臭被害に加え、そこから発生する蚊に悩まされたことから「ブン蚊都市」とも呼ばれました。一方で、市民総動員での河川浄化運動も始まり、きれいな水環境への意識も高まってきていました。また、水辺の多い佐賀市では、昔からトンボが多く見られました。トンボは誰もが知っている昆虫で、幼虫はきれいな水で育ち、成虫は蚊を食べてくれます。
佐賀市の「ふるさと創生事業」には108件ものアイデアが提案されました。
その中から選ばれたのは、水を愛する佐賀市民のシンボルとしてトンボを掲げ、豊かな水辺環境づくりを目指す「トンボ王国・さが」づくりでした。

そのトンボ王国の拠点として、神野公園の睡蓮池をトンボの生息環境となるように改修して造られたのがトンボ池です。「トンボ王国・さが」づくりは、「ふるさと創生事業」で始まった取り組みが現在も継続している全国的に見ても稀有な例であり、トンボをシンボルにした環境政策を30年以上前に打ち出したことは、環境問題が年々深刻化する今日、先見の明があったと言えます。

これまでに神野公園では、佐賀県で見つかったトンボの4割に当たる37種のトンボが見つかっていて、その多くはトンボ池で育ったものと考えられます。しかし、造成されて30年以上が経ち園芸スイレンなどの水生植物が繁茂し、水面が覆いつくされるようになりました。水面がなくなると、トンボは繁殖場所として認識しなくなります。このためNPO法人SATOMORIの主催で、2020年から除草作業を行い、環境改善に努めています。

近年、佐賀県をはじめ全国的にトンボが激減しています。原因として、稲作で使用される農薬の影響が強く疑われています。現実に水田地帯のクリークでは、ごく限られた種類のトンボしか見ることができません。しかし、住宅地の中にある神野公園トンボ池は農薬の影響がなく、「本来いるべき種」が健在です。トンボ池はいわばトンボたちの「ノアの箱舟」のような場所なのです。トンボだけでなく希少な水生植物や淡水魚などがすむトンボ池の環境を守るために、NPO法人SATOMORIはこれからも頑張ります。

トンボ池除草作業の様子

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